「所長のこらむ」平成30年

このページは、松永会計事務所新聞の「所長のダンディコラム」を掲載しています。

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平成30年

【 時 代 No.16 (関与先企業と共に成長する) 】H30.12

 時代 というテーマで書き続けて16回。どうやら 現在の松永会計へとたどり着くことができました。 表題の (関与先企業と共に成長する) は松永会計のコンセプト。 お付き合いをしている関与先が求める成果の実現を共有する中で、自らも成長したい・・・・との願いです。30数年前、夫婦間での言い争いに端を発して始まった『会議方式』。今様の解釈によれば、社内コミュニケーションの構築であり ガバナンス機能の保持と言えるでしょう。その体験の中から得たものは、経営者(社長さん)はどなたも利益(儲けたい)という結果を望んでいる・・・・との再認識でした。問題は、そんな簡単なことでも その気持ちを持ち続けてもらうことの難しさでした。対応として、当人(社長さん)以外の誰かが その気持ち(儲けたい)を知り見守り続けることで、当人のブレを防ぐことができるのではないか との思いからの『会議方式』でした。  

 国の施策として始まった「経営改善計画策定支援事業」に『会議方式』を持ち込んで対応した10数社では、全社で返済猶予から正常化への転換を始め、黒字化、業績改善 と、 確かな手応えを得ることができました。「経営することの当否を予測することはできない。 結果としての利益だけが それを教えてくれる」今更ながらドラッカーの言葉を噛みしめています。

  この経験をベースに、残る関与先企業への取り組みが松永会計に与えられた使命(ミッション)です。 体制作りもどうやら目途が立ち、担当者からの提案があるでしょう。チャレンジしてください。

【 時 代 No.15 (経営改善計画策定支援事業) 】H30.11

 2008年(平成20年) リーマンショックにより、金融市場を始めとする世界経済は大きな影響を受け、各国それぞれの対策を打ち出しました。我が国でも苦境に追い込まれた中小企業向けに政府が打ち出した支援策の一つが表題の事業です。 借入金の返済に苦しむ企業が、経営改善計画書を金融機関に提出することで 借入金の返済猶予を受けられる制度を国が創設。その計画造りを支援するために外部の専門家(税理士・会計士等)がこれに当り、掛かった費用の一部を国が支援する仕組みです。職業柄、国にお金を入れる(税金)経験はあっても、逆の流れの業務はなく物珍しさもあり早速手をあげ、24年11月に認可を受け事業に関わることとなりました。 

 松永会計では決算時に翌期の経営計画書作りが基本作業だったので、これをベースに社内会議方式を絡め、対象企業の業績回復を果たせれば。と 関与先3社を対象に安易なスタートを切ったところ、予想外に手強い相手(金融機関プラス行政)でした。関係する金融機関側からは それぞれ貸金確保の立場からの主張があり、行政からは法文の厳密施行を要求され、対応に四苦八苦の状態となってしまいました。当方の思惑では、計画造り2分管理指導8分を予定したのですが、実態は計画8分管理2分。予算もそのような配分でした。中小企業での結果は経営者次第であることは承知していたので、当初は改善計画書を早期に仕上げ、計画に沿ったフォロー体制を会議方式にダブらせ結果に結びつける予定でした。 急遽 予定変更、計画造りに時間をかけることとしました。着手後 完成までの期間:1件目6ヶ月、2件目は11ヶ月、3件目2年10ヶ月。主取引金融機関を交えて月複数回の打合せを重ねて経営改善計画書を完成させました。 結果・・・3社とも計画書完成時には黒字化でき、社長たちの気持ちの変化を実感しました。マコトに・・・会社は社長次第との思い。

【 時 代 No.14 (一人三役) H30.10

 中小企業経営者の大多数の方は、自らの事業で担っている主要な役割が三種類あります。

① 決定(方針・事業内容・その他)   ② 資金 ③ 実行((ヒト、モノによる事業の運営)・・・・

事業を始めるには、①行うべき事業は? 方針は? その他諸々を決め、②必要資金を調達、③資金によってヒトとモノを集め 決められた事業を実行し その成果を社会に送り出す。 社会がこれを受け入れてくれれば 売上となって資金が戻ってくる。そして次なる③のサイクルに繋げ 事業は継続する。サイクルが繋がり続ければ企業は成長し 永続に結びつく。  

 今を時めく一流上場企業もその黎明期は4畳半一間や裏店で始まっています。そして成長に伴い ①株主総会(株主) ②取締役(会長など経営決定者集団) ③社長以下全社員の業務執行集団の3機能が独立分離し、相互に関わり合いながら社会から成果を受けて企業を成長継続させます。その成果を ①株主=配当金 ②取締役=役員報酬 ③社長以下社員=給料として受け取る仕組みが会社です。 基本は社会が受け入れてくれるモノ(物・サービス)を提供し続けることにあります。社内のコントロールを失い反社会的な行為に走る。 と、世の反発を受け あえなく倒産に至る危険を招きます。直近ではスルガ銀行です。苦境に陥った東芝があります。創業者一族による①②③にまたがる身勝手な経営、或いは保身に走った③の専横と②の無責任さが招いたものです。ゼロからスタートした大多数の中小企業の社長さん方は、この三つの役割を一身に背負い日夜頑張っておられるのです。社員に向かって思いを語っても容易に届かないのはそのためです。「コンプライアンス(公正な事業の遂行)」「ガバナンス(企業の内部統制)」はそのためにあります。30数年前、夫婦二人だけの会社であった出来事を契機に始まった松永会計お薦めの会議方式は、三つの役割を活性化する解となり得ます。

【 時 代 (新会議方式の定着) XIII 】H30.09

 出向くか 招くか の違いはあっても、問題を抱えている企業に対する金融機関を交えての会議は好結果を生みだした。赤字から抜け出し黒字化した会社。黒字化しないまでも改善に向けて着実に歩み出した会社など、対象企業の全てが慢性的な赤字状態から抜け出すことができた。

 会議は毎月開催が基本。 名称はその会社の実情に合わせて取締役会、役員会、経営会議、業績検討会等 様々である。出席者は、会社:社長と関係する担当者。金融機関:その会社の担当者場合によっては支店長や融資業務担当者など。会計事務所:その会社の担当者、所長、書記。

会議の在り方も経験を重ねる中で① 前回の議事録の読み上げ関係者が署名をする(1ヶ月前の会議内容を記憶している者はほとんどいない)。 ② 前月と期首からの累計数値の報告とその評価。③ 会社として行うべき行動の報告。④ その他自由討議。の順で行われる。所要時間は1時間を目途にしているが、内容次第で時間超過に及ぶこともある。

 このような形で行われる新会議方式は10年ほど前に始まり、その間に接触した支店長は数十名に及ぶ。この会議方式を進化させたい思いから、会議後の雑談時に支店長方に話を伺った。驚くべきは全ての方が このような会議は初体験だということである。金融機関側の立場で考えれば、融資先企業の情報が適時に適正な形で入手でき、内容についてのヒヤリングが可能となり、企業の財務を担当している会計事務所からの話を聴ける機会でもあるのに。更には、金融行政機関からは「事業性評価」が求められている現代において・・・何故?・・・の思いは強い。

 「新会議方式」と称するのは、松永会計創業時の昭和年代に、夫婦だけの企業での「夫婦間だけでも意思疎通は仕掛けないと保てない」の体験から始まった会議方式が母体となるからである。

【 時 代 (決算書の信頼性) Ⅻ】H30.08

 会計参与制度に関わる会合で聴かされた金融機関からの一言、要は「中小企業の決算書は信用できない」。その一言を静岡に持ち帰り、経常的に開催されている金融機関関係者との会合で紹介したところ、堰を切ったかのように同趣旨の発言が相次いだ。あまりの激しさに驚かされたが、積年の鬱憤が言わせたのだろうと受け止めるしかなかった。話し合いの結果、問題事項については 新たに制定された個別注記表』に記載するよう努力する。に落ち着いた。以後 その趣旨に沿った決算作業に努め、金融機関に対して可能な限りの情報開示を心掛けてきた結果、関係者からはそれなりの評価をいただけるようになった。との思いはある。

 会社経営を維持発展させるためには志(ココロザシ)と資金が必要となる。志は誰でも持てるが資金が続かない、であえなく倒産に至る。はよくある図式。そこを凌ぐには金融機関の支援。となるのだが、経営者諸兄はなべて金融機関を苦手とする傾向が見受けられる。原因は前段で触れたように、金融機関が中小企業の決算書に対して抱く根強い不信感が背景にあることが原因ではないか思う。さて、どうしたものか から始まったのが、月次で行っている取締役会における業績検討を主取引銀行で開催してみる。との試みであった。債務超過乃至はそれに近い会社・・・金融機関側から見れば問題企業となるのだが、開催は金融機関に出向いて、或いは金融機関を会社にお招きして事績検討会を開催してみた。 結果は上々。経営者は何をなすべきか? 行ってはならないことは何か、などは百も承知。それでも、それが続かないが現実となっている。ところが、それを他人に聴かれる・・・ましてやその他人が金融機関となればなおさらであろう。会議で話した内容への意識が強く残るためかと思うのだが、結果が数字に見えだすようになり出した。確かな手応えである。

【 時 代(会計参与③)Ⅺ】H30.07

 会計参与制度の推進を図るために まずは実践あるのみとの考えから、制度設計に関わった職業会計人(公認会計士、税理士)は会計参与に就任すべし との申し合わせもあって、私も関与先4社にお話して会計参与に就任し実務経験を積むこととなる。 会社法が求めるレベルの決算書類を作成し「会計参与報告書」を添えて保管・・・・求めに応じてこれを提供する役目を担うこととなる。中心となるのは一定のレベルで求められる 信頼性の高い決算書作成となるのだが、既に20年余の実践を重ねてきた書面添付の実績をベースにすれば問題なくクリアすることができた。 が、並行して行った啓蒙活動として 全国各地で講演会やシンポジウムを行う中で、中小企業の決算書に抱く根強い不信感を知ることとなる。 
 各地で開催された講演会等は 税理士や会計士を対象にしたもので、会計参与の制度に至る背景や実践上の留意点などをテーマに、主たるプレィヤーは会計学分野の学者、制度に高い関心を寄せる金融機関関係者、それに実務家としての税理士がこれを担当した。幾度か顔を合わせるうちに、意見交換を兼ねた会合も持たれるようになった。そんな席上で金融機関の関係者から遠慮がちに言われた言葉が記憶に残った。「中小会社の決算書は、銀行での基準で読むと理解できないことが多くあります。相当以前に倒産した会社の売掛金が記載されていたり、利益が少ないとの理由で決められた減価償却計算を見送る。商品仕入のための融資を申し込んでおきながら 直前の決算書には半年分を賄える在庫が計上されていたりするんですよネ。どうしてなんですかネ」・・・・この発言に影響されたのか、 他の金融機関関係者からも同種の発言が続いた。なんとなく気まずい中で会はお開き。内容を自問自答しながら静岡へと戻った。

【 時 代(会計参与②)Ⅹ】H30.06

 平成17年7月26日に公布された「会社法」が 平成18年5月1日に施行されたことにより、「会計参与」制度も実効性をもって動き出すこととなる。
 会計参与の役割は、取締役(社長)と共同して計算書類(決算書)を作成し、これに一定の責任を持つ任意の制度である。  
 外部監査はアメリカEUなどの経済先進国では当然のこととされている制度だが、日本では上場企業などを除き制度化されていなかった。そのための不都合の代表例は銀行からの借り入れである。地域の中小企業では証書借入であっても不動産を担保に取られた上 社長の個人保証まで要求される。まことに命懸けの借り入れとなっている。他方 上場企業をはじめ大手中堅企業には、電話一本、紙切れ一枚で借入は可能と言われている。差は何か?・・・計算書類(決算書)の信用力である。外部監査人の監査を受け、その監査証明を持つ大手企業では、その信用力により担保、保証人なしでの融資が可能となっている。会計参与制度は、この不都合な現実を是正する突破口となりうるとの思いをもって制度定着に向けての活動に入る。
 定着へ向けての狙いは二つ。
 まずは数。県内の税理士、公認会計士であるTKC会員に会計参与就任を働きかけるために『34の会』を立ち上げた。会計参与のサンヨをもじり、せめて34人位の仲間が欲しいとの思いからである。
 もう一つは、決算書の唯一ともいえる利用者である金融機関への働きかけである。県中部地区の銀行信金に呼びかけ、会計参与就任者との交流会を設定した。
 会計参与制度の周知と、利用者である金融機関側の考えを取り入れるためである。『34の会』はそれなりの成果があり、予定した就任会員を得たが、金融機関相手では、中小企業の決算書をめぐる現実を知らされることとなる。

【 時 代(会計参与)Ⅸ】H30.05

 『正しい決算に基づく正しい税務申告をする』・・・・当たり前すぎる書面添付の普及活動も徐々に実を結びだし、税務当局もこれを積極的に評価しだした平成10年代半ば、新たなる制度設計に関わることとなる。
 会社法制に関する従来の商法、有限会社法等は、カタカナ文語体で表記されており、これを利用者に判り易いひら仮名口語体に改めるとともに、重要な規定が多くの法律に散在し利用者にとって判り難いものとなっていたのを、表記を平仮名・口語体にし、各種制度を見直して再編成することとなった。  この作業を進める中で会社経営の健全性の確保のために、会計参与制度の創設が図られることとなった。
 上場会社など大会社に課せられている会社計算の正確さを証明するための会計監査人制度が持つ機能を、大企業以外の中小にも持たせようとするのが狙いである。
 中小会社の書面添付推進活動に関わっていた経歴からだと思うが、実務家としての意見を聞きたいとのことで、以後 立法に関わっている法務省や学会の方々と接する機会が増え出した。会社法は平成17年7月に成立し18年5月から施行されたが、松永会計の在り方を見直す転機となる貴重な経験となった。 夫婦だけの会社のもめ事を機に始めた取締役会の開催や議事録の整備などは、会社のガバナンス機能の整備であり、会社経営の効率化には欠かせないツールであるとの思いを改めて強く持たされる機会ともなった。
 会計参与制度が定着するか否かの雑談話がある。国税と法務の担当者は初年(18年)に千名が就任したら大成功だとの予測を立てたが、当方は実務家としての立場もあり千名超を主張した。結果は彼らの勝ち。
 以後 制度定着に向けての活動に入る。

【 時 代(決算書の信頼性)Ⅷ】H30.04

 TKC全国会が書面添付体制造りに取り組みだした平成初期、TKC静岡会での普及活動に従事することとなった。当時 TKC静岡会の書面添付実践状況は300会員中10会員にも満たないパーセンテージ状態であった。 そんなTKC静岡会でも全国レベルでは最先端と評価され TKC全国会での普及活動も任されることとなり、以後10数年間は北海道から沖縄までを走り回ることとなる。当然のことながら、事務所にいる時間は削られることとなった。 が、書面添付の有難さを知ることともなった。 既に松永会計では全件が書面添付対象であり、一定のルールに従って行われる巡回監査と決算申告作業は、作業内容及び記録面での透明性と正確性の高さを作り出し、次第に税務調査との縁が遠くなったことで それが実感できた。この間 事務所スタッフには多くの迷惑と苦労を掛けたが、改めて感謝したい。 役目柄 全国の税理士事務所と交流し 名だたる会計事務所の実態を知るチャンスを持ったが、間違いなく書面添付実践という背景を持った第一級の事務所スタッフであり、私にとっては自慢するに足る彼ら彼女らである。

 平成10年代に入ると 書面添付と言えばTKC と言われるようになり、業界内での存在感も増すようになった。 税務当局も書面添付制度を評価したのか或いは税務行政の効率化もあってか、積極的に書面添付の実践を支持するようにと変わりだしたのである。 推進作業も質的な変化を見せだし、全国的な会議と税務当局や税法学研究者との交流が増え出した。これが次なると結びつく。

【 時 代(決算書の信頼性)Ⅶ】H30.03

 税理士法33条の2による書面添付(以下 単に書面添付)。 制度の内容は、税務申告書を作成した際に、税務の専門家としてどのように相談を受け、関与し、調製したかを 書面にして添付し申告する。 申告書が調査対象となっても 調査着手前に関与税理士に疑問点の照会があり、疑点が解決すれば調査は行われない。 という 申告納税制度の下では至極当たり前の制度・・・なのだが・・・税務申告書の最終的な監査は税務調査だとする時代にあっては異端の作業とされ、書面添付の輪は遅々として広がることがなかった。  平成の時代に変わった頃には、松永会計では全関与先への書面添付の体制造りが出来上がり、特殊な例(関与先企ではなく その企業の取引先が行った脱税や不正経理処理に関連しての確認調査などがほとんど)を除き 次第に松永会計は税務調査との縁が遠くなり、調査立会の経験を持たない監査担当者も増えてきた。 
 平成10年代半ば 税務署側の態度が変わりだし、書面添付への積極的な取組要請が出されるようになった。それは年を追って強くなってきている。 にも拘らずである。全国300万の法人企業への書面添付率は未だに10%に満たない。 こんな素晴らしい制度を・・・・である。信じられない思いだ。  同業諸兄に聴かれることが多い・・・・書面添付をして税務署から睨まれないか、みせしめ調査はないか・・・等々である。30年以上前の時代を引きずる諸兄に暗澹たる思いである。税務調査に対する恐怖心か?  それとも 作成した申告書への自信のなさか。 理解不能な業界である。

【 時 代(決算書の信頼性)Ⅵ】H30.02

 昭和の時代、業界には『オミヤゲ』と称する習慣が存在していた。 一般的な会社には3年に1回の頻度で税務署の調査があり、問題ありの会社なら ほぼ毎期 調査が行われるのが通例となっていた。 会社経営者にとっての税務調査は身近な存在なのだが、調査にあたる税務署員の闘争心を煽らないために、脱税に至らない軽微な間違いを用意しておくことを『オミヤゲ』と呼んでいた。一部ではあろうが、企業に関与する税理士にとっても二重の意味で歓迎すべきことと受け取られていた。調査があれば、税務署との友好的な関係がアピールでき、それ相応の調査立会料収入を受け取ることができたからである。 
 当時 調査する側にいた私にとって『オミヤゲ』は屈辱以外の何物でもなく、むきになって調査をしていたものである。 そんな経験もあって税理士稼業を始めるにあたり、調査されても修正されないような決算書 申告書の品質を自分に課す意味から、調査立会料を受け取らないことを方針としてきた。  但し そんな時代に税理士法33条の2による書面添付(以下 書面添付)を行えば、当局側の闘争心を掻き立てることは容易に想像できた。 案の定というべきか調査の嵐に巻き込まれたが やがて嵐は過ぎ去り、現在では年に数回 税務署から電話を通して提出申告書に関するお尋ねがある程度で、いつか調査とは縁遠い松永会計となった。 この間、書面添付になじめず去った関与先もあったが、書面添付に協力頂いた関与先を守るためには止む無しと割り切った。

【 時 代(決算書の信頼性)Ⅴ】H30.01

 飯塚毅先生からの啓示によって税理士法第33条の2(書面の添付)を知り、長年に渡るもやもやから抜け出すきっかけを得、会計事務所としての方向性を定めることができた。 昭和50年代の終わりころである。 但し迷いはあった。「役所の中の役所」である税務署を相手に、彼らが理解できていない制度を使った局面での反発は相当なものであろうとの予測は立った。日本のお役所が持つ特質に、知らないことに対する警戒と反発は尋常ではないことを知っていたからである。(現職時:審理や審査を担当していた時代を含め税理士法第33条の2(書面の添付)の存在は知らなかったからである)。 
 それでも迷いを振り切って(書面の添付)の実践に入った。 関与先の了解を得ながら、一件 また一件と件数を伸ばした。 当初は然したる反応もなく ヤレヤレと思っていたが、間もなく嵐がやってきた。 それは正しく嵐と呼ぶにふさわしかった。 (書面の添付)案件に対し次々と調査が始まったのである。 それも鬼をも泣かすと言われた国税局の資料調査課案件として行われたり、税務署の特別調査グループによる調査が行われた。 協力していただいた関与先に対し申し訳なく思いながら必死の思いで対応をした。 何よりつらかったのは 長い間の付き合いを重ねた友人達が、調査に際して文字通り「牙をむいて襲い掛かってきた」ことであった。結果は、いずれも軽微な計算ミスに基づく修正はあったが、嵐も過ぎてみれば今の松永会計を支える礎となっている。調査の対象となった関与先とは、折に触れて当時の話が出てくる。 何か、共に戦った戦友に似た気分である。

松永文宏税理士事務所は
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TKC全国会は、租税正義の実現をめざし関与先企業の永続的繁栄に奉仕するわが国最大級の職業会計人集団です。
東海税理士会所属

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