「所長のこらむ」平成25年

「所長のこらむ」の過去掲載分です。

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平成25年

【 君子に九思あり(論語・季氏篇)】H25.12

困ったときの論語頼り・・・・  そもそも君子って何者??から・・・
論語の限らず中国古典には君子がやたらに出てきます。  徳行の備わった人。 儒教の道徳を身に付けた教養人等々諸説ありますが、ここは大雑把に尊敬に値する立派な人でまとめましょう。
君子には、絶えず念頭に置いて考えることが九つある。 如何に箇条書きしてみる。
① 視るには明を思い・・・物事を視るときはその核心に迫るまではっきり見るようにする
② 聴くには総を思い・・・聴くときにはその話の核心を聴いてそらさぬ
③ 色には温を思い・・・顔の表情は絶えず柔和で温かみを失わない
④ 貌(カオ)には恭を思い・・・態度は誠実さ第一で臨む
⑤ 言には忠を思い・・・発言には責任を持ち
⑥ 事には敬を思い・・・行動は絶えず慎重に行う
⑦ 疑わしきには問いを思い・・・疑問を感じたらそのままにせず疑問を晴らす
⑧ 怒りには難を思い・・・怒りの感情が出たら他に迷惑を及ぼさないように
⑨ 得るを見ては義を思う・・・利得に関しては義に合うかをよく考える
ムウ~~~ン  疲れる。

【 『まかせる』ことのルール 】H25.11

『いそがし!・・イソガシ! ア~忙しい。何で俺だけがこんなに忙しい ! !』  よく聞く話。 何事も自分で抱え込みたがる経営者であれば身に覚えはあるはず。 有能な経営者を自任する人ほど「自分でやったほうが早い」あるいは「やらしても期待通りの成果を出してくれない」などと言いながら 相変わらずの『いそがし!・・イソガシ! ア~忙しい』である。

仕事を一人で抱え込むデメリットは大きい。忙しさが続くのは自業自得だが、問題は周囲の人材が育たない。 後継者育成・・・・などは望むべくもない。答は簡単だ。 誰かに任せれば・・・・。上手に任せられれば自分一人よりも、はるかに大きな成果が期待できるし人材も育つ。 ところが『まかせる』に失敗する人は多い。周囲にも見かける。原因は『まかせたのだから俺は知らん』である。とにかく「まかせたのだから勝手にやれ」と言わんばかりの乱暴さ。それでは『まかせる』ではなく「ホッタラカシ」である。

『まかせる』にはルールがある。 最も大切なのは「いつまでに何をするのか」つまり目的と期限を明確(ココが大切)に指示し方法はマカセル。 解らないことがあれば丁寧に教える。 もうひとつ忘れてはいけないのは、期限までの間に定期的に伸長状況を確認し「なにか困っていることは?」と話しかける。 ついでに「よくやってもらって助かる」の一言があれば完璧。 これで人材の育成と御社の未来にチャンスをもたらす時間が生まれる。

【 『経営者の条件』その後 】H25.10

『経営者として成功するためには特別な才能や訓練は必要ない。ただ いくつかの簡単な習慣を身につければよい。』 と、これも極めて簡単なフレーズにひかれ [松永会計・ドラッカー教室 第2シリーズ] は、表題の著書をテキストに7月から始まった。
教室の狙いは簡単な習慣とは何かを知ることと、知ったことを皆さんに届けるコミュニケイション力を手中にしてもらうことにある。初めの3ヶ月間はスタッフ諸君の企画力を試し且つ習得してもらう意味を込めて、月の研修担当者に教室の運営を任せることにした。幸いにして三者三様の教室運営があり、まずまずのスタートと評価している。
経過の3ヶ月の教室はイントロともいうべき部分で、 その内容は
① 人類の歴史は、いかなる分野においても、豊富にいるのは無能な人のほうであり、ある分野に優れた能力を持つ者といえども、他の分野については並みの能力しか持たない。
② 現代社会で事業が成果を得るためには、人を組織し組織をして成果をあげねばならない。
③ 従ってわれわれは、一つの分野で強みを持つ人の、その強みをもとに仕事を行えるよう組織を作らなければならない。我々は現存する人間をもって組織をして成果をあげさせなければならない。
・・・・・そして冒頭部分 いくつかの簡単な習慣につながる。

成果をあげるために身につけておくべき習慣的な能力は五つあり、10月の教室からその内容に入る。併せてそれを伝えるコミュニケイション力の獲得。当番は庶務担当の中山さんである。

【一葉落ちて、天下の秋を知る】H25.09

猛暑の直中でいささか気が引ける言葉だが、木の葉が一枚落ちるのを見て秋の気配を感じ取るの意。
先見性の大切さを指摘しているのだが、ひとの上に立つ人には、物事を予知し予見する能力が求められる。  小さな現象を見逃さず、はっきりと表れていない変化を読み取ることができれば、大きな失敗をせずに成果を手中にできる。 経営者には大切な資質である。 ひとは誰でも経験に頼り、その経験から物事を決めようとするが、裏切られることも少なくない。 経験に頼ることの善し悪しではなく、表題は小さな事実から世の中の変化を確実に読み取ることの大切さを伝えている。
企業は世の中が必要とするものを生み出すことによって存続が可能となる。 そこのところが鈍感となり、世の中の動きを読み違え、あえなく倒産に至る企業は多くある。 巷間 会社20年存命説、あるいは30年寿命説が語られる所以と考える。  企業が存続するためには企業の外なる世界に対する貢献は絶対の条件となる。  しかし企業は成長し成功するほど、そこに働く者の関心・努力・能力は内なる組織のことに占められ、外なる世界に対する貢献と成果を忘れていく。 世の中はIT時代。 データは非常な速さ、正確さ、精密さをもって処理され経営判断に利用される。 しかし使用されるデータの大部分は組織内のものであることを知らねばならない。世の中の重要な情報を入手した時には既に手遅れ・・・・ まことに たかが一葉 されど一葉。である。

【敗戦の日】H25.08

間もなく8月15日を迎える。今は終戦の日と称しているが、私の中では敗戦の日として記憶に刻まれている。
当時10歳であった私は、2度目の疎開 (最初の疎開は神奈川県横須賀市から父母の故郷である焼津市) で藤枝の奥の瀬戸の谷村一之瀬という所の公民館を住居としていた。 その日の昼ごろ、何故か通っている分校の下にある川で友達と川遊びをしていた。泳いだり岩の上で寝そべり甲羅干しに余念がなかった。
その時、頭上はるかを2機の敵機が飛行機雲を残しながら川下から川上の方向に飛んでゆくのを茫然と眺めていた。(何故 敵機と解ったか・・・当時、わが日本の飛行機はほとんど日本の上空を飛んでいなかった) 何時もなら鳴るはずの空襲警報のサイレンもなく、違和感と不安から早々に水遊びを止め、分校へと引き上げた。
校庭には10人ほどの大人たちが、何故か顔を寄せ合い、小声でヒソヒソと何かを話している。 時々私たち子供をチラチラ見ながら声をかけるでもなくひたすらヒソヒソ話を続けている。何故かそこにいては悪いのではないかと思い、何故子供たちをのけものにするのかと不信感を持った。何故だ。何故だ。そんな思いで公民館に戻った。母親から日本は負けと話され、だからヒソヒソ話なんだ。だから子供外しなんだ。負けたということはとてつもないことなのだとひたすら思い込み、無限の喪失感に包まれた。

だから、私の中での8月15日は敗戦の日であり、断じて終戦の日ではない。ましてや終戦記念日とは何事。ごまかして自分を欺くのかと思うのです。

【経営者の条件】H25.07

表題は数あるドラッカー著作物からの題名。
松永会計のドラッカー教室は、上田惇生編訳による エッセンシャル版「マネジメント」をテキストにし 2年をかけてこの6月に一応終了しました。その成果のほどは量り様もありませんが、スタッフたちの日常の言葉の端々からはそれなりの手ごたえが感じ取られるようになりました。  まことに「継続は力なり」です。しかし、彼らの言葉が経営者である皆さん方にまで届くとは思えません。  理由は簡単です。実践を経ない知識は、どんな力強く発せられても相手に届かないことを知っているからです。
表題は、次なる所内研修用テキストの題名です。選んだ理由は立ち読みした<まえがき>の中にありました。
以下、その<まえがき>から
一応の成果を上げるためでさえ、理解力があり、懸命に働き、知識がある (誰もが欲しがる人材) だけでは十分でない。 成果を上げることはこれらと違う何かがある。 とはいえ、成果を上げるために特別の才能や、適性や、訓練が必要なわけではない。 物事をなすべき者が成果を上げるには、いくつかの簡単なことを行うだけでよい。   ・・・・しかもそれらを実行するために生れ付き必要なものは何もない。  (略)
成果を上げている者はみな、成果を上げる力を努力して身につけている。
・・・・成果を上げるよう努める者は、みながみな成果を上げられるようになっている。
すばらしい!!!  不言実行

【CEOとCOO】H25.06

最近の新聞紙上では表題の用語が紙面に踊る。CEO=Chief Executive Officer=最高経営責任者COO=Chief Operating Officer=最高執行責任者 の意味で、企業のトップマネジメント組織での地位と業務を明らかにするための肩書である。一般的には会長=CEO、社長=COOのパターンが多く、企業での決定者と執行者の関係をなし、職務権限上の上下関係を形成している。 以上は大企業のお話。 当然ながら中小企業の社長さん方は意思決定も執行役も一身に引き受け孤軍奮闘が実体。

さて、トップマネジメントにおける意思決定についての話。 役員会その他の会議での社長の役割は最終決定者であることを自覚して欲しい。 ご自身の決定により会社の方向性は固まり、全社員がそれに向けて力を尽くす。これが組織としての企業の在り方です。 決定にミスがあれば、それはそのまま業績に跳ね返ってきます。ダ カ ラ・・・決定に過ちなきを図るため会議を開き皆の意見を聴くのでしょう。 3人集まれば文殊の智慧。せっかく衆智を集めたのに・・・ ナンデあんなに社員の話の腰を折って喋りまくる ノ?。 何で話を最後まで聴き届けない ノ?・・・・。 社員は社長の話を決定として受け取ります。社長が口をはさめば他の者は自分の考えを言わなくなります。 結果は(アカの他人の)社長が決めたものなのだから・・・・ どうせ何を言ったって・・・・の気分が蔓延します。聞こえたふりの空気。 お願いだから社員の話は最後まで聴いて・・・・・・。  そうすれば、1(社長)対10の決定でも社長の決定は支持されます。

【「話し上手に聞き上手」と「話し上手は聴き上手」】H25.05

今朝(4月25日)の朝刊コラムの書き出しは「話し上手聞き上手」。 私の口癖は「話し上手聴き上手」。 「」と「」とは一字違いだが受ける感じはかなりの違い。前者は のんびりと会話を楽しむ雰囲気をもち、後者は会話に集中するビジネス・教育の匂いがし、どこか一生懸命さが漂う。

次いで「きき」・・・・ 『聞き』と『聴き』との使い分けは他意があってのことではない。漢字に変換するとき両者が出たに過ぎない。ただし、他人(ヒト)に言わせると、どうも私は『聴き』を多用しているようだ。
変換時に出てくる標準辞書には音声に関係する「きく」が3種。
[聞く= 一般的]  うわさを聞く。 忠告を聞く。 聞くに堪えない。など
[聴く= 限定的・身を入れてきく]  名曲を聴く。 国民の声を聞く。事情を聴く。
[訊く= 常用外・尋ねる]  先生に訊く。

表題にかえり、「話し上手聴き上手」。  2月号に書いたばかりなので言いたくないけれど。 会議とは「会合して相談、議論すること」(こちらは小学館版国語大辞典) 会社であれば、よりよい成果を獲得するために衆知を集める会合となる。存分に周知を集め決定する。それがトップマネジメントの役割。 周知を黙らせ、たった一人の智慧しか使わない。 な~~ンてことにならないように。  やっぱり周知は使わニャ 損 ソン!

【 平成18年1月号“ことは易きにあり”】 H25.04

表題は、本欄18年1月号の書き出しです。好きな言葉『事は易きにあり、而るに諸を難きに求む(孟子・離婁章句)』を取り上げた。 意味は「ことは簡単である。にもかかわらず、人というモノは わざわざ困難なところに為すべきことを求めたがる」

関与先企業で開催する役員会などの社内会議でも これに似た思いを持つことがある。問題の解決法として、「誰かに会い、何かを話す」ことを決めても、これがなかなかできていない。ご本人からはそれなりの理由(弁解??)を聞かされる。 場合によっては(・・・・本人にとっては)とてつもなく困難な理由も聞かされる。 が、「会い・話す」ことがなされていないことには変わりない。たかがそれだけ!されどそれだけ! である。
「会い・話す」ことがなされていれば問題は解決されている。いなければ次なる展開となる。  ・・・ハズがそうならない。

お分かりかと思うが私もその一人。「会い・話す」ことができなくてどれだけ無駄な人生を過ごしてきたか。  そんな観点から、行動力に定評のある人を観察すると、「会い・話す」ことに躊躇しない性向が見て取れる。「会ってみなければ解らない。話してみなければ解らない」とおっしゃる。 多分先天的なものと思う。 が、そこに躊躇を感ずる凡人にとっては越え難い壁であることには変わりない。 その壁が、そばにいる誰かが声をかけるか、あるいは見ていることで越えられるのであるならば、声をかけ見つめる誰かは必要。
役員会はその様な場でもある。

【“もしドラ教室”その後】H25.03

関与先の某社役員会の席上で発せられた社長の一言『もしドラ 知ってる?』   それがきっかけで始まった松永会計の【ドラッカー教室】は、時には関与先の役員、お仲間の先生方の参加を交えながら3年目に入った。  ツッカエ ツッカエ!戸惑いながら!遅々として進まない思いはあるが、担当するスタッフは悪戦苦闘しながらも、どうやら「組織編」へとたどり着いている。使用しているテキストの冒頭文言は“今や、あらゆる先進社会が組織社会となった”に始まる。「主な社会的課題は、すべてマネジメントによって運営される永続的存在としての組織の手にゆだねられた」と続く。  つまり、現代社会の機能は組織の仕事ぶりにかかっている。さらに、現代社会の典型的な市民(つまり あなた)は組織の被用者であり、組織を通して働き、組織に生計の資を依存し、組織に機会を求め、自己実現と社会での位置づけ・役割を社会に求める。と結論付けている。  まことにその通りであり反論のすべもない。それなら、組織を活かし、いかにして成果を得るかに努めなければならない。
こんな話を、ライフワークとして取り組んでいる金融機関の若手職員勉強会でも取り上げているが、「眼からウロコ」的な反応がある。モノゴトは大局感が必要といわれるが、日常の些事に追いまくられていると見失いがちとなる。自戒を込めてつくづく思わされる。
それにしても、ドラッカーは遅々として進まない。

【話し上手は聴き上手】 H25.02

この欄でコミュニケイションに触れたことが何度かあります。本音を言いますと、社内会議などで社長さん達の話しかたを見たり聞いたりしていると、正直 もう少し何とかならないか。と思わされることが度々あります。世間に出ればその様なことはないだろうに、社内ではどうしてあんなに一方的で乱暴なのだろう。と思っていました。      社長業とはその様なものだと受け止めるしかないのか。ご家庭ではどんなになっているのか。などと、要らぬ心配などもしていました。
先日、ある社長さん(この社長さんも一方的タイプ)からこんな話を聴かされました。「先生と会うたびに話し方を何とかしろと言われ続けてきた(そんなに言ってるかなあ)。 “うるせえ” と思っていたけど、女房にその話をしたところ、言われましたネ。 先生の言うとおり。 うちでも言うだけで私たちの話聞いたことある? 子供たちの話聞いたことある?? ッテネ。  そんなことないだろうと思っているけど女房があんまり真剣なんで・・・・。  やってみましたよ。相手がしゃべり疲れるまで聴いてみましたよ。途中何度か怒鳴りたくなったけど、 ひたすら我慢の子。 不思議なもんだね。聴いてるうちにフムフム一理あるある・・・なんて思えてくるんだよネ。何より、その後女房の機嫌が良かったことが収穫だったよ」
覚えがありましたらチャレンジしてみませんか。「まず隗より始めよ」はずっと以前に本欄で取り上げた記憶があるが、こんな場面で使っていいのかな。

【精神一到、何事か成らざらん『朱氏語類』】H25.01

いささか陳腐ではあるが今年の言葉として選んでみた。
この言葉は前句を省き、後句である表題のみが一般に知られている。そこから、いざというときの決断など、瞬発的な行為を形容する言葉として使われている。所謂 火事場の馬鹿力的な意味で使われがちであるが、前句を含む成句の持つ意味はまったく異なる。

「陽気発する処、金石(きんせき)も亦(また)透(とお)る、精神一到、何事か成らざらん」

中国の二元論ではすべて「陰」と「陽」で表される。ここでいう「陽気」とは、単に明るい性格との意味ではなく、やる気 とか 強気 といった人生を積極的に生きようとする優れて肯定的な姿勢を意味している。
『気をみなぎらせ、絶えず前向きの姿勢を崩さずに事に臨めば、金属や石のような堅固なものでも貫き通すことができる。精神の集中さえきちんとできていれば、困難な局面でも乗り越えられる』が本来の意味。    まあ、「日ごろの心掛けが大切だよ。自分の人生に対して真剣に取り組み、陽気発するまでに強固な意志を育めば、必要な時に精神の集中を達成することができ、困難に遭遇した時も打ち克つことができる ヨ」と、まことに教育ママ的言葉である。

一寸先は闇。見通しにくい現世を乗り切るには、不断の強い気持ちを持ち続けることが大切。 お互い・・・・今年も頑張りましょう・・・・

松永文宏税理士事務所は
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TKC全国会
TKC全国会は、租税正義の実現をめざし関与先企業の永続的繁栄に奉仕するわが国最大級の職業会計人集団です。
東海税理士会所属

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